うら田 創業80年史
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125第4章 試練を乗り越えて 一郎から東一へ代替わり  業容が拡大する中、一郎が気にかけていたのは母きみと病気を抱えた弟陽作だった。大病を患うこともなく90歳の坂を越えたきみも寄る年波には勝てず体調を崩す日が増え、陽作の食事や生活の世話もままならない状態になっていた。かといって妻だけに2人の世話をさせるのは負担も重く、一郎は自分が家族を支えなければとの使命感を日に日に深くしていた。 一郎は、創業70周年の節目を迎える平成18年(2006年)2月、社長の椅子を東一に譲り、自らは会長に就任することにした。また、明朗が副社長に就任した。このとき一郎は68歳であり、工場火災の後、父から突然経営のバトンを受けてからはや41年の歳月がたっていた。この間、会社は大きく飛躍し、一郎の胸の内ではやりきったとの満足感から、社長職に未練はなかった。 実務面でも3、4年前から徐々に東一に任せていたため、社長交代といっても、一郎からあらためて伝える言葉もなかった。

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