うら田 創業80年史
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128「私は洋菓子については詳しくないので、徳弘に任せていたが、今思えば任せすぎていた。徳弘がやりやすいようにと遠慮する気持ちもあった。本来ならば経営者の視点から客観的に指導すべきで、そういう意味では自分自身の力量が不足していた」 ただ、当時の東一は店の将来を不安に思うよりも、「頑張って続けていけば年を追うごとに店舗運営のノウハウも蓄積し、売り上げも伸びていくだろう」と楽観視していた。 深刻な問題が起きたのは、開店から3年あまりがたった平成19年(2007年)11月だった。「パティスリー・ラクアジュール」で販売したバウムクーヘンの賞味期限が偽装されていると、消費者から石川県に通報があったのだ。県から問い合わせを受けた徳弘は慌てて東一に電話した。「新聞に載るかもしれない。県からも呼び出しがかかるだろうから、対応してほしい」 事情はこうだ。このバウムクーヘンは、そもそも店のオープン3周年記念としてお客様に無料でプレゼントするための菓子だった。ただし、自社にバウムクーヘンを作る設備がないため、製造を埼玉県内の業者に委託し、無料配布と合わせて店頭でも販売した。

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