うら田 創業80年史
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23第1章 始まりはパン屋から駐車場として整備されている。その場所には当時、小島という八百屋が営業していて、その一角の間口3間、奥行き4間(1間は1・82メートル)ほどを借りて店舗とし、2階を住まいにした。 一はパン職人の下積み時代から、将来自分の店を持った暁には製造から手がけようと、必要な道具を少しずつ買い集めていたようである。しかし、桂月堂売店として開業することになったため当初は製造はせず、本店からパンや長崎式カステラなどを仕入れたり、仕入れたコッペパンにジャムを挟んだりして販売することからスタートした。 桂月堂売店が開店した10月15日は毎年、すぐ近くにある神しん明めい宮ぐうで祭りが行われる日である。神明宮は古くから「お神明さん」と呼び親しまれ、春と秋の祭礼では御ご幣へいに見立てた餅を食べれば厄やく災さいを免れ、玄関に飾ると厄除けのご利益があるとされる「あぶりもち神事」が有名で、地元だけでなく市内から大勢の人が訪れてにぎわう。 もしかすると、一は多くの人出を見込んでこの日を選んだのかもしれない。ところが、すっかり当てが外れてしまい、せっかく仕入れた餡パンやクリームパンの多くが売れ残ってしまった。

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