うら田 創業80年史
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27第1章 始まりはパン屋からけ暮れる一やきみにはその余裕がなかったが、すゞは和倉温泉や湯涌温泉の白雲楼ホテル、東洋一の規模を誇った森永製菓塚口工場(兵庫県尼崎市)などへたびたび旅行を楽しんでいる。 一は近隣の店からも菓子を仕入れて販売した。例えば、一が懇意にしていた寺町の宇野甘かん源げん堂どう、野町の小こ出いで菓子店(現在の柴舟小出)から分けてもらったせんべいなどである。 お茶屋からの注文に応じて、菓子を仕入れることもあった。その一つが金沢のひな祭りに欠かせない伝統の飾り菓子「金きん花か糖とう」である。金花糖は溶かした砂糖をタイや果物などの形をした木枠に流し込んで固め、赤や黄色の水あめで華やかに色づけした菓子だ。 3月のひな祭りが近づくと注文が来るのが常で、一は色鮮やかな金花糖御用聞きに使っていた自転車にまたがる一

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