うら田 創業80年史
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47第2章 山あれば谷ありいった。 もんもんとする一の相談相手になってくれたのが、戦前から浦田にせんべいを卸していた小出菓子店2代目の小出弘夫社長だった。大正12年(1923年)生まれの弘夫は一より13歳年下だったが、二人は不思議と馬が合い、普段から兄弟のように親しく付き合っていた。「浦田さんのところは、いい場所に店があっていいよな」 商売の話になると弘夫が決まって口にするのが、社交の場としてにぎわう茶屋街のすぐそばにある浦田の立地の良さだった。 一方、一がうらやましく思ったのは小出菓子店の銘菓「柴舟」である。柴舟は江戸時代から金沢で親しまれてきた菓子で、せんべいに砂糖と生姜汁で作った蜜を塗り、甘辛く仕上げたものだ。 柴舟はそもそも湿った感じの食感だったが、弘夫は製法を見直し、口に含むと軽く砕け、甘兄弟のように仲の良かった小出弘夫氏(右)と一
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