うら田 創業80年史
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48みの中に生姜の風味がほのかに漂う上品な菓子に改良し、店を代表する商品として育て上げていた。「わしにも柴舟みたいな店の顔になる菓子が作れんかな」 ある日、そうもらした一に、弘夫は「舞鶴でも作ったらどうや」と勧めた。舞鶴とは、柴舟と同じく金沢に古くから伝わる菓子である。見た目は鶴の舞う姿をイメージした三角形で、餅米を薄く伸ばして作った皮で生姜風味の砂糖を包んで作る。風雅な名は加賀藩5代藩主 前田綱紀が付けたとされる。 舞鶴に魅力を感じた一は、弘夫から作り方を教わることにした。舞鶴は形がシンプルなだけに一見すると簡単にできるように一には思えた。ところが、いざやってみるとなかなかに手強かった。特にいったん皮を柔らかくするために当てる蒸気の加減が難しかった。蒸らしすぎると皮がべたべたになり、蒸らしが足りなければ皮が割れてしまう。皮が適度に柔らかくなったところを見計らって、手早く美しい形に砂糖浦田にとって最初の看板商品となった「加賀舞づる」

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