うら田 創業80年史
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63第2章 山あれば谷ありに加え、餡だけでなく求ぎゅうひ肥を入れた工夫が消費者に喜ばれていた。その分、コストや手間は増えるが、「他にはない菓子を作って、お客様に喜んでもらいたい」という小田社長のポリシーを形にしたような商品だった。 小田社長は謙虚で誠実な人柄で、一郎のような見ず知らずの若者が訪ねていってもとても丁寧に対応してくれた。そればかりか、「最高の原料を使っておいしい菓子を作れば必ず経営にプラスになる」「人のまねではない、自分が本当に考え抜いた菓子を作らねばならない」「昔からある菓子に自分なりの創意を吹き込み、その土地にふさわしい菓子を作ることが大切」といった具合に、菓子作りに欠かせない心構えやこれからの経営者に必要な視点などを惜しげもなく語ってくれた。 こうした言葉の一つ一つに、一郎は深い感銘を受けた。そして、その後の菓子作りの指針が定まる思いがしたのだった。 石川県土産品コンクールで金賞  金沢へ戻った一郎は昭和36年(1961年)10月、大学時代から付き合っていた

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