うら田 創業80年史
76/141
78 モラロジーと向き合い商売見直す 会社の危機に直面し、思いがけないタイミングで経営の舵取りを任された一郎は、商売の指針を得られればと、それまで興味のなかったモラロジーの勉強会にも参加するようになった。 そこで気付かされたのは、商売の原点を見つめ直すことの重要性だった。企業が10年、20年と続いていくために何より大切なのは、お客様から寄せられる信頼であり、その信頼を勝ち得るには自分の利益を追い求めるだけでなく、お客様の役に立つことを真っ先に考えよという教えである。 振り返ってみると、浦田の経営は貧しい生活から一日も早く抜け出すために、いかに儲けるかに軸足が置かれていたように一郎には思えた。文字通りゼロからの創業だっただけに仕方なかったとはいえ、この先も長く商売を続けていくには改める時を迎えていた。「菓子屋の仕事はいい材料でおいしい菓子を作り、それをできるだけ安く提供し、お
元のページ
../index.html#76