うら田 創業80年史
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90きた高度経済成長は終わりを告げた。鉄鋼や造船など日本経済を牽引してきた産業が軒並み低迷し、不況が深刻化。トイレットペーパーや洗剤などの買い占め騒動、便乗値上げが相次ぎインフレが加速した。翌年、日本経済は戦後初めてマイナス成長を記録し、50年代に入ってもなかなか不況のトンネルを抜け出せなかった。 こうした中、昭和53年(1978年)に金沢市兼六町でオープンしたのが石川県観光物産館だ。これは協同組合石川県観光物産館が石川県内の菓子や伝統工芸品といった特産品を一堂に集め、展示販売するために建設した施設だ。菓子や伝統工芸品を製造する企業はそれまで、社団法人石川県物産協会に加盟し、東京をはじめ全国の百貨店などで物産展を開催しており、業界にとって地元で観光物産振興の拠点ができたことはうれしい出来事と言えた。同協会で常務理事となっていた一郎も、物産館の実現になにかと骨を折ってきただけに、喜びはひとしおだった。 物産館は地下1階、地上3階建てである。地下1階は菓子の売り場、地上1階は伝統工芸品の売り場と観光案内所、2階には和風レストランと休憩所が設けられた。日本三名園の一つ兼六園のすぐそばにある立地の良さから、オープン直後から連日大勢の観光客が訪れた。

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